不眠(JA)
不眠(JA)
もう何度目かわからない寝返りを打った 後に寝ていたはずのジェクトに声を掛けられた。
「寝れねえのかよ」
「起こしたか?…すまん寝苦しくてな」
背中を向けたまま答えると、スプリングの軋む音と同時にジェクトの腰掛けた側のベッドが沈んだ。
「何か心配事でもあんのかァ?」
振り返ることも出来ずに身を固くする。
「…そんなんじゃない。あんたは寝ろ」
ククッと喉の奥で笑う声。
枕に流れた髪を一筋撫でて。
「つれねえな、アーロンちゃんは」
「うるさい、早く寝ろ!」
振り返ればしてやったりと嬉しそうに笑う顔。
しまった、と思う間もなくジェクトは上半身を覆い被せた。
大きなその掌を頬から耳たぶへと滑らせる。
「止めろ、くすぐったい」
肩を竦めて拒んでみせれば、そのまま顎をクイっと持ち上げて。
顔を逸らそうともがいてみても力強く引き寄せられる。
その強引さとは逆に焦らすような緩慢な動きで唇が重ねられた。
きつく閉じた唇をこじ開けた舌が口内を侵すと、自分でも気付かぬうちにジェクトの腕を掴む。
名残惜しそうなジェクトの唇が離れるとアーロンは大きく息を吐いた。
「…何をしているんだ」
「何って、キス」
「そんな事を聞いているんじゃない」
「何だっていいじゃねえか。…もっかいしてイイ?」
「イイも悪いもあんたが勝手にしたんだろうが」
「じゃ、もー一回…フゴッ!」
掌拳で思いっきり顔面を突かれたジェクトは顔を押さえてうずくまる。
「馬鹿が…調子に乗るからだ」
アーロンは再度ジェクトに背を向けて布団を頭まで引き上げた。
「いってぇなァ…」
ブツブツと言いながらジェクトのベッドが軋み、布団の擦れる音が聞こえる。
「オレを振ったんだからちゃんと寝ろよ?オヤスミな」
ふて腐れた声。
あんたのせいで余計眠れなくなった、
とは言えない。
ジェクトが先へ踏み込んでいいものか躊躇ってるのはわかる。
でも俺は素直になれずにジェクトを拒む。
あんたがいつもみたいに強引になればいいんだ。
柄にもなく遠慮なんかするから、俺はどうしていいかわからない。
そして、そんなことは口に出せるはずがないのだ。
隣に寝ているだけで心臓が跳ねる自分をどうかしていると思う。
この先眠れぬ夜が続く事を考えて、アーロンは深い溜め息をついた。
すぐに聞こえ出したいびきの主を恨めしく思いながら。
【END】
『言い訳』
ある日の夜、ベッドに入ってから突然浮かんだSSで す。電気も消して後は寝るだけ、な状態なのにしょうがなく携帯にポチポチ打ち込んで(笑)
メモ程度だったので翌日なんやかんやと付け足して、そ こから少し放置してました(やっぱり)
初めのうちって、アーロンはともかくジェクトもどうし ていいかわかんないんじゃないかと。拒否されたら素直に引いてしまうんじゃないかな、無理強いはマズイと思って。
けどアーロンとしては今まで馬鹿!とか言ってた相手に 素直に飛び付いてはいけない。だから、ちょっと強引な位に押してもらえないと駄目なわけで。素直じゃない。でも好きだから、隣に寝てるとドキドキモガモ ガ。
均衡が破られる日が楽しみだ(笑)