鬱積した厚い雲が空を覆っている。
雲の切れ間から太陽が時折顔を覗かせる短い時間だけ薄暗い草原は色彩を取り戻す。
日向ぼっこというには陽が足りないが、いつものようにジェクトは休憩を寝そべって過ごしていた。
寝転がった姿勢のまま大きく伸びをすると、思い出したように上半身をブラスカに向ける。
「なあ、旅の終わりには何があんだ?」
アーロンの表情が一瞬強張った事に気付いているのかいないのか。
相変わらずのほほんとした面持ちで片肘をつき、ブラスカの顔を眺める。
「何があるんだろうね、それは私にもわからないな」
目を細めたブラスカは雲に覆われた空を仰ぎ見ながら軽く首を傾げる。
「なんだ、わかんねえのか?じゃあよ…この先にオレのザナルカンドは、あると思うか?」
不服そうに、かつ、先程よりも少しばかり真剣な眼差しで、望むべき答えを請うように問う。
「さあ、どうだろう」
ジェクトの希望も虚しく、先程の質問と変わらないあっさりとした答え。
暫しの沈黙。
それ以上待っても希望のある答えは出て来ないと悟ったジェクトの舌打ちがそれを破った。
「…ったく、何もわかんねえんだな、脳天気な召喚士様だぜ」
半ば呆れ顔でブラスカを見やると、再びゴロンと仰向けに寝そべる。
悪態をつかれてもブラスカは表情を変えない。
アーロンだけが眉根を寄せ、二人のやりとりを黙って聞いていた。
上空は強い風が吹いているのか、雲は形を変えながらどんどん流れていく。
ブラスカの頬を撫でた風がジェクトの無造作に伸びた黒髪を揺らす。
「それじゃ聞くが、君は何で私に着いてきたんだい?」
風の流れを目で追うように、ブラスカの視線がゆっくりとジェクトに向けられる。
「あんな所に閉じ込められてりゃ何も出来ねえからに決まってんじゃねえか」
仰向けに寝転がったまま空を見上げ、当然だと言わんばかりの口調で答えを返す。
ブラスカはジェクトの横顔をしっかりと見据え、深く頷いた。
「同じ事だよ。何もわからないわけじゃない。少なくとも、私はシンを倒す。君は君のザナルカンドに帰る。それだけはわかっている。その先に何があろうと…前に進まなければ始まらない。そうだろう?」
何かを考えているかのように口をつぐむジェクト。
ブラスカは黙ってジェクトを見つめ、そのブラスカをアーロンがじっと見つめている。
再び、暫しの沈黙があった後。
「ま、そりゃそうだな」
がばっと体を起こしたジェクトは自分に言い聞かせるように小さく何度か頷いた。
そのまま休憩を続けていると、ブラスカがふいに遠くを指差した。
「ほら、見てごらん。光芒だ」
「コウボウ?」
ブラスカが指差した先にジェクトとアーロンが視線を向ける。
雲の合間から地上へ向けて斜めに伸びた一筋の光の線。
神々しい柔らかな光が遠く山の向こうで地上を照らす。
それはまるで希望の光が差し込んでいるようで。
ジェクトにはその先にザナルカンドがあるように思えて。
アーロンには旅の終結が希望に照らされているように思えて。
自分達のいる場所は今陰を帯びているけれど、行く先は光が射しているのだと思えて。
言葉無くその光の筋をただただ見つめる二人を見てブラスカは微笑む。
「さあ、そろそろ出発しようか」
【END】
『言い訳』
2周年アップの為に書きかけて…放置してた駄文です(死)放置っていうか、書けなかったんです、自己完結しちゃってて。
むりくり、ええもうホントむりくりで完成させてアップしました、記念アップなのに(自爆)
やっぱりパソで書くと駄目ですな、文字数が見当つかなくて、変なとこで改ページ入る…。楽は楽なんだけど。
それよりこのアーロンの扱い。ごめんなさい!!どうにも……(黙)
『光芒』は裏日記にも書いたんだけど、いつか使いたいなーと思ってたらここに使われました。ちなみにタイトルもどっかで聞いたことありますね(爆)
先は見えなくとも、FINALLYも彼らと一緒に歩んでいきたいと思っております。