ハーフタイム






控え室にそぐわないアーロンの存在に驚く仕草も見せず、ジェクトは流れる汗を素早くタオルで拭う。

「やべぇな、左手いっちまったみてぇ」

鋭い目付きで鏡の中の自分を確認するように言い放たれた言葉は、相手への投げ掛けではなく宙に浮いた。
大丈夫か、と背中に問い掛ける前にジェクトは大きな体躯を素早く反転させ。
右腕で力強くアーロンの腰を引き寄せると奪うように唇を重ねた。
腕を背中に回す間もなく、絡まった熱い息からすぐに解放される。
上げ掛けた腕は行き場をなくし、深く短いキスの余韻が言葉を遮った。

「行ってくるわ」

突き放すように体を離したその瞳は、既に扉の向こうのスタジアムだけを捉えている。
今唇を重ねた恋人の存在さえ見えていない。

地鳴りのように響く歓声。
振り返ることもなく部屋を出ていくその背中から言葉よりも確かに伝わってくる決意とプライド。
日常の生活で示す軽率さからはかけ離れたその姿は王者の名に相応しく誇らしげで。

まるで別人のような空気感に戸惑いに似た胸のざわめきを覚える。
自分以外の者に向けられる熱意への軽い嫉妬と同時に、その男が自分の手のうちにあるという優越感。

ファンがジェクトに魅了される気持ちをもわかった気がする。
野性的で荒々しい闘志むき出しのその姿が今までとは違う形でアーロンを掴んで離さない。
その腕が触れた腰も、重なった唇も、絡められた舌も、今だ熱を帯びて疼く。



また一段と大きくなった歓声が、聞こえた。













【END】









『言い訳』



長い間温存、という名の放置プレイしてました(滅)
書きたい事がうまく書けずにメール保存フォルダに埋もれてたものを救出…したつもりが救出できたかどうか怪しげなところになりました。あはははは。笑うしかない(爆)
何か一つの事に全てをかけ過ぎてそれしか見えてない。そん位熱い人、スキです。

ジェクト至上主義同志としていつもあたしを萌えさせてくれる某Iにこの一品を勝手に捧げます(笑)