breaktime






よく晴れてはいるが風が冷たさを孕んでいた。
日向を選んで腰を下ろし、目を閉じる。
目蓋が日差しを受けて、まるで春のような穏やかな温もりを感じる。
心の中までじんわりと暖かさが広がり始めて、ゆっくりと意識を解放する。

「なんだぁ?ブラスカ寝ちまったのかよ」
「シッ、静かにしろ!ブラスカ様には休息を取っていただかないと…」
「わははは、おめぇの声のがでけぇぞ」
「…うるさいっ」

いつもの二人のやりとりが聞こえてくる。

ジェクトの声は豪快で、いつも朗らかだ。
アーロンの声は怒気を孕んでいるが、どことなく楽しげに聞こえる。
そんなことを言うとまたアーロンはムキになって否定することだろう。

「ブラスカも寝ちまったことだしオレらも寝ようぜ」
「馬鹿を言うな。みんなで寝たら誰がブラスカ様をお守りするんだ」
「そういやそうだなぁ…んじゃおめぇ起きてろ。オレは寝るぜ」
「おい、ジェクト!!」

何ともジェクトらしい。
そして、何ともアーロンらしい。
二人らしい会話だ。

「ウソウソ、アーロン寝ちまっていいぞ」
「…どういう風の吹き回しだ?」
訝しげな表情のアーロンが目に浮かぶ。
「寝たら襲ってやっからよ」
「おそっ…馬鹿かっ!?」
ニヤリと笑うジェクト。
真っ赤になって怒るアーロン。
手に取るようにわかる二人のやりとりに思わず笑みが洩れた。

今この瞬間を平和だと錯覚する。
いや、少なくとも今この瞬間、私達は平和だ。
私は、この平和を守る為に歩んでいるのだと感じる。
世界を守るというより明確に見える小さな平和。

ともすれば、何を守るのかわからなくなる程の長い旅路。
大切な仲間が傍にいることが私に守るべき存在を感じさせる。
この穏やかな日に、耳に入る仲間の声が私の心に平穏をもたらす。

目を開ければ眩しい世界がそこには広がる。
「もう起きちまったのか?」
「あんたがうるさいからだろう!」
「いや、十分休ませてもらったよ。ありがとう」

ありがとう。
心の平穏をくれて。
行く道を照らしてくれて。

「さあ、行こうか」













【END】









『言い訳』


勤時バス停にて。
風は冷たいけどいいお天気で、目をつぶった時に思い浮かんだ話。
「天気いい〜仕事してる場合じゃない〜」なんていつもは思うところですが(笑)
何だかとてもその一瞬が平穏で、なのに何故か切なくなった。
自然を感じながらあまりにも平穏な場にいると、私の場合刹那的になるようです(謎)