10years



『前書き』


この話は若アーロン受もどき(謎)が含まれます。
それもアリ!という方のみ先にお進み下さいませ。























旅の目的地は目前。
不安や希望や恐怖…様々な思いが胸を交錯する。
野営の火は明々と夜の闇に映える。
力強くもはかないその揺らめきをただ見つめていると、突然後ろから抱き竦められた。
「うわっ!?何をするっ!」
「しーっ。あんまでけぇ声出すとブラスカが起きちまうぞ」
「…離れろ」
「やなこった」
必死に腕を振りほどこうと試みても鍛えぬかれたその体躯はびくともせず。
ふうっと深い溜め息をついて力を抜くと、小さく笑う振動が体を伝わってくる。


「旅の終わりも近い。ふざけるのもいい加減にしたらどうだ」

ジェクトの成長ぶりは目を見張るものがあった。
ガードも板についてきて、存在に感謝することも少なくない。
だが、こうやって人にちょっかいを出す所は相変わらずで。
「聞いているのか」
後ろから抱かれているせいでジェクトの表情を見ることが出来ない。
「黙ってないで何とか言ったら…」
「うるせぇな、おめぇこそちったぁ黙ったらどーだ」
「なっ…!」

ぞんざいな物言いにカチンときて、ありったけの力で腕を振りほどいた。
自分が怒るとジェクトはニヤニヤおかしそうに笑ういつものパターン。
振り返るとジェクトは…笑っていなかった。
拍子抜けして唖然としていると、一瞬真っすぐな視線に捉えられ狼狽える。
「ふざけてなんかねーよ」
そう発した口元が緩んだ様を見て、なぜかひどく安心した。
グイッと抱き寄せられ驚いて顔を見上げると、炎に照らされたその顔は眩しそうに笑って。


「もうすぐ終わりなんだろ。好きな奴抱きてぇと思っても無理ねーだろーが」
「…誰が誰を好きだって…?」
聞き間違いじゃないかと聞き返すと一層強く抱き締められ、混乱する。
「やっぱり気付いてなかったか…」
苦笑混じりに耳元で喋られ、顔に熱が籠もる。

ジェクトが俺を好き、だと?
…ありえない。
いつも小馬鹿にするようにからかわれ、いつだって子供扱いされて苛立って。

そうか。
またからかわれているのか。

その考えに辿り着いて眉をしかめる。
再びジェクトを見上げると考えは見透かされていたようで。
「からかってなんかねーぞ」
先回りされてぐっと言葉を飲み込む。
「…だってあんたはいつも俺をからかって…今まで一言だってそんなこと言わなかっただろう!」
我ながらバカなことを言っていると思う。
必死になって言い訳する子供のようだ。
「鈍感だとは思ってたが…言わねーでもそんぐれぇ気付けよ」
楽しそうに笑われ、何だか悔しくなる。

それなのに間近で見るその顔に、伝わる体の熱に、鼓動が早まる。
「そんなこと…言われねばわからん…!」
それを悟られまいと発した声は自分でも驚く程か細く、恥ずかしさに目眩を覚える。
くくっと笑いを堪えるジェクトを盗み見ると、視線がかち合い慌てて反らす。
抱かれた腕を振りほどくことも忘れ、広い胸に顔を埋めている自分。
何が起こっている?

グイッと顎を掴まれ、否応なく見つめられる。
「だからおめぇはガキだっつーんだよ」
「なん…っ!?」

反論は叶わなかった。
いつもの豪快なイメージとはかけ離れた、柔らかく触れるようなキス。
からかわれているわけではないと思い知る。
今までの行動全て、愛情の裏返しだというのか?
だとしたら、表現のヘタな男だ。

振り回されている事実に憎まれ口を叩きたくなった。
「そんなんだから息子に嫌われるんだ」
「…うるせぇ」
黙れと言わんばかりに強く抱き締められ、自分の言ったことを後悔する程深々と口付けられ力が抜けていく。

すっかり脱力した俺を座らせ、ジェクトはバツが悪そうに笑った。
今更ながら笑顔の似合う男だ、と思った。

「…寝るわ」
気持ちを問われても返答できないくせに、自分の気持ちだけ告げて去ろうとする背中に何故か腹が立って。
「さっさと寝ろ…」
小さく呟くとジェクトは背中を向けたまま軽く手を上げ、明々と燃え続ける炎の向こうに歩み去った。

一人残され、深く息を吐く。
パチパチと薪が燃える音だけが響く静けさの中、今起きたことも現実ではないように思える。

今更想いを告げるなんて。
考える時間も与えず、今まで通りに接しろということなのか。
それがヤツなりの優しさのつもりなのだろう。
「卑怯者…」
ジェクトに対してなのか自分に対してなのかどちらともつかない言葉を吐いて。
胸の奥の微かな痛みに気付かないふりをして、新しい薪を炎に投げ入れた。




「俺…アーロンのことが好きなんだっ」
突然の告白と共に抱きついてきたティーダを受け止め、ふと10年前を思い起こす。

言われるまで気付かない自分はあの頃と変わっていないんだろうか。
『だからおめぇはガキだっつーんだよ』
ジェクトの声が聞こえる気がして小さく笑うと、ティーダは顔を真っ赤にして膨れてみせる。
「何笑ってんスか!?」
「…何でもない」
何か言いたげな唇に口付けると、ビクッと体を震わせながらも懸命にしがみついてくる。
自分は今この少年を愛しいと思う。
全てが欲しいと思う程に。
想いを抑え接していた時、いつもジェクトを思い出していた。


ジェクト、あんたもこんな想いだったのか、と訊ねたかった。

『親父なんか大嫌いだ』というティーダには、間違いなくあんたの想いは伝わってない。
愛情表現のヘタなあんただが、最後にちゃんと伝えてやってほしい。
あの時のように。


言わねば伝わらないこともある。
10年経った今でも俺はそう思う。



「アーロン…アーロンは俺のこと、好き…?」















【END】









『言い訳』





もう色んなとこで言ってますが…最近ジェクト大好き!です(照何)
つか、ジェクアロ万歳!!(壊爆)

えっと…アロティサだってことは重々承知です;
なので、思い切ってアロティ+オヤジーズサにしてしまおうかと(そっち変えるのかよ/爆)
アロティも書きますよ〜、まだリク消化してないんで…て、リク書いてねぇっ!!(気付くの遅っ/死)

無駄に長くてすんません;
また自己満足でした(陳謝)