朦朧とした視界が徐々に開けてくると、傍らに懐かしい面影を見つけた。
「おつかれさま」
笑顔の中で優しく動く口元。
そうか。
ここは…。
再会の喜びよりも先につい先程起きたばかりの出来事が頭の中で再生される。
10年の重みから解放された瞬間。
あの子は――
「ジェクトはいないんだね?」
我に返った自分を見つめているのはあの頃と変わらぬ眼差し。
自分だけが年を重ねたような奇妙な感覚。
「そのようですね」
靜に頷くと穏やかな笑みは一瞬崩れて。
「この10年、君には辛い思いをさせてしまったね」
ナギ節を残して異界へと旅立った大召喚士ブラスカ。
この男はその後のスピラを、その後の全てを知っているのだろう。
日々、あの時の選択が正しかったのかどうか考え続けてきたに違いない。
自分とジェクトから離れたこの世界で、たった一人で。
苦悩の年輪が見えたような気がするのは気のせいだろうか。
あれから10年、それぞれ違う場所で何かと闘ってきた。
「随分お待たせしてしまいました」
頭を下げるとブラスカがそれを制す。
「あの時君の言うことを聞いていたら…」
『それじゃあ何も変わらない』
確かに自分はそう言った。
だが、あの日が今この時の布石になっているのは紛れもない事実。
そして何よりも、あの日があったからこその出逢いがあった。
『ティーダ』というかけがえのない存在との出逢い。
「なかなかいい10年でしたよ」
本当の所は。
シンもかつての仲間も関係なくなる程の想いを知って。
感じたことのない幸せを得て。
体が引き裂かれんばかりの別れを先程味わったばかりで。
そんなことを口にするつもりは毛頭なかった。
ジェクトはここにいない。
そしてあの子も自分の横にはもういない。
迷わずここに来れたのは、スピラにさえもあの子はもういないからだ。
「ユウナもジェクトの息子も君にお世話になった。ジェクトの分も礼を言うよ、ありがとう」
「よして下さい、私は何も…」
頭を下げるブラスカを今度は慌てて止める。
そう、教えられたのは自分の方なのだから。
ふと視線を上げるとブラスカの眼差しに捉えられる。
全てを見透かしているようなその目に、身動きがとれなくなる。
この胸の穴までは見透かされまいと、唇にきゅっと力を入れた。
ブラスカが微笑んだ。
嬉しいとも悲しいともとれる顔で笑って。
「アーロン、よく頑張ったね?」
張りつめた糸を切るにはその一言で十分だった。
ささくれだった心も噛みしめた唇も、そのねぎらいに抵抗することは出来ず、気付けば頬を伝う一筋の光。
10年経った今でもこの男の前では嘘をつけない自分。
堪えていた別離の痛みは、後から後から頬を流れる。
最後の覚悟はあの子との別れ。
もう二度と逢えないのだと思えばこそ、強い覚悟が必要だった。
その覚悟もブラスカの一言で少しは救われた気がして。
「そのうちひょっこりジェクトも顔を出しそうな気がしないかい?ホラ、あの辺りからさ」
指差す先は眩しい光が差し込んでいた。
「そう考えると楽しくなるだろう?」
スピラに光をもたらした大召喚士は、ここでも希望の光を見付けようとしている。
目を閉じて想像してみる。
あの光の中からあの子が駆けてくる姿を。
光を吸い込んだ金の髪を揺らし、光を放つような笑顔で大きく手を振る。
『アーロン!』
耳を澄ましたらあの子の声が聞こえた気がして、祈りを込めながらゆっくりと目を開けた。
【END】
『言い訳』
緊急企画、]-2発売記念!!
ということでぇ、緊急すぎて訳がわからない(爆死)
えっと、ホントはオヤジーズ3人衆にしようとしたんだけど、この前書いたからやめときました←でもオヤジ2人(汗)
まだ]-2ちょっとしかやってないので、『君なの?』の正体がわからず…。
迂闊にティーダ登場させると話が違ってきてしまいそうなので、とりあえずアロティ意識したらこんなんなっちゃいました(滅)
書きたいテーマはあったんだけど、朝浮かんで夜になったら忘れてて、とりあえずアップ!のマジ緊急なので、本当に支離滅裂で申し訳ないデス;
なんとなくお祝いに何か書きたかったんだもん…(涙)