blanket
突然、目が覚めたような気がした。
もう夢を見ていない自分に気付き、軽く失望した。
熱いものや狂おしいものが、一瞬にして温度を失っていく。
心の中でそれらにそっと触れてみる。
遠い昔の写真を見るように、懐かしいような苦々しい様な感覚が広がる。
終わったのだ。
そう思った。
もう二度と会うことのないその面影を反芻しては繰り返し祈った日々。
もうこの胸を焦がすことはないのだと、知ってしまった。
忘れようと試みる反面、忘れてはいけないんじゃないかと思っていた。
忘れたわけではない。
かといって、残っているわけでもない。
あの人がくれた言葉は今でも憶えているけれど、あの人への熱い想いは取り戻せない。
消失感は私の心を少し曇らせる。
ひとつの想いが呆気ない程突然過去に変わった様を他人事のように呆然と見つめていた。
その時、彼が笑った。
いつも横にあった笑顔が突然眩しく見えた。
ただ、それだけのこと。
ただそれだけのことで突然始まった彼への想い。
この心変わりは罪なのだろうか?
私を守りたいと死んでいったあの人への想いを忘れ、あの人のお兄さんを想う。
その想いは薄情だと言われるべきものなのだろうか?
それを決めるのは一体誰なのだろうか。
新しく始まった想いは、私を少し悩ませながらも暖かい気持ちにさせる。
彼と向かい合っていいものか考える間もなく、さらわれていく。
暖かい毛布にくるまれ眠りに誘われるかのように。
私は既に気付いているのだ。
自分がその毛布を知らぬ間に手放せなくなっていることを。
かつて自分を暖めていた毛布にくるまることはもうないことを。
私は知っている。
前の暖かさを知っているからこそ、今の温もりを得たことも。
毛布の暖かさ、くるまれる幸せを他でもない、あの人が教えてくれたからなのだと。
【END】
『言い訳』
誰のことなのか、ある一文が出てこないと全くわからない今回の話(苦笑)
初めは、想いを失った時のことを書きたくなって書いたんですが、私ワカルーは好きなんで(笑)
何がきっかけとかそういうんではなく、突然に想いは終わりを告げたりして。
あんなに忘れようとしてたのが嘘みたい、て位に一瞬で消えることがあります。
自分のモノなのにコントロールできない感情にはいつも振り回されっぱなしです(苦笑)