ごーいんぐまいうぇい。
召喚士様御一行の旅もお正月の為しばしお休み。
暇を持て余したティーダとリュックが何やら相談している様子。
「ねぇ〜、餅つきは?」
「いいっスね、餅つき!!」
「でしょでしょ!?ルー姉に聞きに行こ〜☆」
どうやらこの旅の実質的な主導権を握っているのはルールーらしい。
二人が話をするとルーも暇だったのか、あっさりと許可が下りた。
その話を聞いていたキマリがおもむろに口を開く。
「キマリも、餅をつく。」
一瞬の沈黙。
「ダメよ。キマリは毛が入るから」
確かに…。
ルーの一言にティーダとリュックは妙に納得し、気の毒そうにキマリを見る。
当のキマリはさほどショックを受けるようでもなく。
「わかった。」と神妙な顔で頷いた。
もしかしたらよく言われ慣れているのかもしれないが。
さて、餅つき大会。
キマリの姿が見当たらないが、浮かれた皆は気付かないようだ。
女性陣は調理担当。
リュックが少し膨れ気味なのは、餅つきが出来ない為。
小柄なリュックは杵を持つとよろけてしまうのだ。
「俺つくっス!俺にやらせて!」
「しょうがね〜なぁ、じゃあ俺が捏ねてやらぁ」
まんざらでもなさそうなワッカ。
ぺったんぺったん。
こねこね。
ブリッツで組んでるせいか、二人の息はピッタリである。
そうなると面白く思わない者が約一名。
ティーダがあんまり楽しそうな顔をするものだから、アーロンの苛々は募るばかり。
当然その矛先は可愛い恋人ではなく、相手の男に向かう。
「疲れただろう、少し代わろう…」
優しい顔でティーダから杵を奪い取る。
ワッカに緊張が走った。
例え餅つきとはいえ、『伝説のガード』と呼ばれた男とコンビが組めるなんて。
そう、ワッカは超ド級の鈍感だった…。
「いくぞ…」
「はいっ!!」
こねこね……バキッ。
「ぐあぁ〜〜っ!!」
一同、愕然。
「すまんな…トサカで手元が見えなかった」
「こ…これ位なんてこと…」
こんな時でも『伝説のガード』に敬意を払ういたいけなワッカ。
が。
アーロンが渾身の力で振り下ろした杵がクリティカルヒットした両手。
そんなものが使い物になるわけもなく。
ワッカ、無念のテクニカルタイム。
これで餅つき要員は必然的に二人だけ。
知らずにアーロンの口元が弛む。
「しょうがない…二人でやるしかなさそうだ」
アーロンがティーダに杵を渡そうとしたその時。
「キマリが餅をつく」
「キマリは毛が……って…えぇっ!?」
一同、唖然。
そこにいたのは紛れもなくキマリなのだが。
ないのだ、毛が。全く…。
「キマリ、どうしたの!?」
「かなり剃るのに時間がかかった」
…そういう問題じゃないと思われるのだが。
何故か全身の毛を剃ってきたキマリ。
それほどにまで餅つきがしたかったのか。
文句ナシでキマリが餅をつくことになり、アーロンが餅を捏ねることになった。
ぺったんぺったん。
こねこね。
よほど楽しいようで、心なしかキマリが半笑いになっているように見える。
…それはそうだろう、全身の毛を剃ってきた位なのだから気合いの入り方が違う。
ぺったんぺったん。
こねこね。
暫らくして、リュックはあることに気付いた。
「ねぇねぇユウナん…キマリ、なんか顔色悪くない?」
「そう?キマリはいつも青い顔してるよ?」
「うん…そうだね…」
気のせいかと思い直したが、やはり段々と青さが増していく気がしてならない。
やはり気になって直接本人に聞いてみようと近寄ると。
キマリは小刻みに震えていた。
「もしかして…寒い…?」
そりゃ、寒いよ。
毛、ないもん…。
「無理しちゃダメだよ!!」
「キマリは強い」
「強くても風邪はひくのっ!」
ツルツルキマリはリュックに連れられ渋々宿に戻って行った。
「…確かに寒いわね」
眉間にシワを寄せるルー。
「私たちも風邪をひくといけないわ。ユウナ、戻りましょ」
「え…でもお餅は…」
「バカップルに任せておけばいいの。さ、帰るわよ」
そして残された二人。
アーロンさん、やっとティーダと餅つきが出来るとニヤリ。
「さぁ、始めるとするか…」
どんなに寒くたって二人でいればあったかい。
二人でいることが幸せなわけで。
「アーロン…」
懇願するようなティーダの目に、微笑みを返す。
「なんだ…?」
「もう飽きたっス!あとやっといて〜!」
ティーダ、とんずら。
「…え?」
二人きりの状況を喜んだのはどうやら一人だけだったらしく。
取り残されたアーロン。
こうして餅つき大会は伝説のガードが【秘儀一人餅つきの術】を習得して幕を閉じた……らしい。
【END】
『言い訳』
なんじゃこりやぁっ!
あけおめ企画とってだしデス(何)
キマリメインのハズだったのに微妙な扱いになってまいました;
まぁ、めでたいことだし許してやろう(激謎不可)