JOY TO THE WORLD




エボンの教えに生きるスピラの者がクリスマスなどというものを知らないのは当然で。
それでもティーダの提案はすんなりと受け入れられた。
お祭り騒ぎの好きな数名の強い賛同を得て。


クリスマスの意味が分からずとも騒ぐ口実にはなった。
そのパーティーも既に終わろうとしていた。
乾杯の時だけ許された少量の酒で酔っ払ってしまったティーダをアーロンが抱きかかえる。

「めりぃくりすまぁ〜しゅ!」
呂律の回ってない言葉を残してティーダはアーロンに担がれて消えて行った。
ルールーは片手を振りながらワッカ、キマリと酒を飲み続けている。
「ユウナん、あたしたちも部屋に戻ろっか」
リュックが声を掛けるとユウナは我に返ったように微笑んだ。


部屋に戻って女の子同士の他愛もないお喋りに花を咲かせる。
途中から何かを考えているような空返事が多くなったユウナ。

リュックが顔を覗き込む。
「どうかした?」
「…あ、うん…。人に想われるって素敵なことだなって考えてたの」
ティーダとアーロンのことを言っているんだとすぐに気付いた。
「あー、おっちゃんはティーダ大好きだもんね☆」
「だよね」
一緒に笑うユウナは羨ましそうにも淋しそうにも見えて。
リュックは「ん〜」と少し考えてから言った。
「でもさ、あたしは人を想う気持ちも素敵だって思うけどなぁ…」

あまり納得してない顔だ。
「ユウナんはスピラの皆の為に旅してるじゃん?」
話が逸れたと思ったようで、ユウナは戸惑いがちに頷く。
「想いの種類は違うかもだけど、そうやって皆を想えるユウナんはすごいと思うなぁ」
今更こんなことを言っても、とも思ったけど。
それでもリュックは素直にそう思ったから。

誰だって誰かに想われたい。
でもその誰かは誰でもいいわけじゃないでしょう?

想うことも同じ。
誰彼構わず想えるわけじゃなくって。
でもユウナは皆のことを想ってる。
それってすごいことじゃない?

ふと思った。
「ユウナんて、サンタさんみたい」
「え?誰?」
子供たちの笑顔の為に無償でプレゼントを配るサンタさんの話をティーダが教えてくれた。
誰かに似てるなって思ってたんだ。

「えとね、サンタさんは真っ白な髭生やしてるオジサン!」
「何それ〜っ、ヒドイよ〜!」

ユウナに笑顔が戻った。

ねぇユウナん、あたしたちが何でガードやってるか分からないかな?
ユウナんはあたしたちに想われてんだよ!

「あたしはユウナん大好きだよ?」
「リュック…。私も好きだよ」
まるで告白しあったようで、二人ともエヘヘと照れ笑い。

「ねぇ、ちょっとお酒とってきちゃおうか」
「でも見つかったら…」
「大丈夫!いざとなったら【ぶんどる】から☆」
「そうだね」
顔を見合わせてまた笑う。

やっぱり笑ってる方がいいよね。
うん、絶対。

「あ!ユウナん、見て〜!」
「わぁ、雪!」
暫し二人で窓の外を見つめる。
ハラハラと舞う雪を見ていると何だか清らかな気持ちになってきて。


「メリークリスマス、ユウナん」

クリスマスの意味は結局分からないけれど。


「メリークリスマス、リュック」

皆がお互いを想い合って、幸せになれますように。


願いを込めて

「メリークリスマス!」









【END】









『言い訳』






久々にぶっつけで書いたらページごとに長さが違いまくり;
リクは『癒し系』ということで、アロティじゃなかったけど良かったかな?←今確認かよ(滅)
また勝手に季節モノ。
なんとなく書かないといけない気がするんだよね。何故かしら。
毎度のことながらリクに応えきれなくてごめんなさい(平謝)←つか、かすってもないね…;