対戦





最近ティーダのはまっているもの…それは【テトリス】。
落ちてくる様々な形のブロックを回転させてうまくはめていき、横一列並ぶと消滅するという単純明快なゲームである。
アーロンが仕事から帰ってくるまで暇を持て余している時に久々にやってみたらはまってしまったのだ。

そんなある日、ティーダが帰宅すると珍しくアーロンが家にいた。仕事が早く終わったらしい。

「そーだ!アーロン、対戦しようよ!」
テトリスというのは二人で対戦することも出来るゲームなのだ。

「くだらんな…」
「え〜っ、たまにはいいじゃん!ね?ねっ?」
いつも一人でプレイしているティーダは対戦相手を見つけて目を輝かせる。
全く興味がなかったアーロンもティーダの押しに負けてコントローラーを握らされていた。


「やって見せるからちゃんと見てろよ!」
まずはティーダのお手本。
慣れたもので、すいすいとブロックをはめ込み一気に消していく。
「こんなものが楽しいのが…?」
「やってみると案外難しいっスよ」
「ふん、楽勝だ」

見ていて簡単そうだと思ったアーロンは早速ゲームをスタート。

…即GAME OVER。

「む……」
「だから難しいって言っただろ?」
「すぐに慣れるさ」


しかし、何度かトライするが思うように指が動かない。
「ププッ…アーロン…センスないっスね…」
「…本気じゃないだけだ」
「じゃあ対戦しよっ!」
決して自分がヘタだと認めないアーロンをティーダはもっとからかってやりたくなった。

「………」
断る言い訳も見つけられないまま強制的に対戦スタート。
結果は、言うまでもなくティーダの勝ち。
「まだ本気じゃないからな…」
「ハイハイ」


―5敗目
「勝たせてやってるんだ…」
「ふぅ〜ん…」


――10敗目
「そろそろ本気出していいっスよ」
「…そうだな…」

負けを重ねる度にアーロンの目付きは険しくなっていく。

――15敗目
「……」
沈黙。



対戦結果、30−0。
アーロン完敗。もとい惨敗…。
肩を落としてうなだれるアーロンの背中に哀愁が漂う。

ティーダはアーロンのあまりのゲームセンスのなさに呆れつつも、少し可哀相になってきた。

「…あ、アレっスよ!ホラ、アーロン片目だから不利なんスよ、きっと!」
「そうか…?」
ティーダの訳の分からない必死のフォローに少しだけアーロンの表情が明るくなる。
「そうっスよ!だからこんなにヘタなんスよ!」
「…フォローになっとらん…」
「あ…やっぱり…?」

ティーダはアーロンを誘ったことを後悔した。

翌朝。

「あぁーーっ!何スかコレっ!!」

目を覚まして無残にも真っ二つに叩き斬られたゲーム機を発見してティーダは呆然とした。
どうやら悔しがってこっそり夜中に練習したアーロンが苛ついて破壊したらしい。

「朝っぱらから何を騒いでる…」
夜遅くまでゲームと格闘していたアーロンが寝呆けた顔で現れるとティーダが掴みかかった。
「自分がヘタだからってゲームにあたるなよ!!」
怒るティーダに開き直ったアーロンはニヤリと笑う。

「何笑ってるんスか!?」
ティーダがますます怒って詰め寄ると、アーロンは得意気な顔で言った。
「ゲームはヘタでも、はめるのは得意だ」
「……は?」
一瞬意味がわからずぽかんとしたティーダに追い打ちをかけるように耳元で囁く。
「対戦するか?」
「………」



アーロンのエロオヤジ発言に絶句したティーダは、その後暫く口をきいてくれなかったという――























【END】