独白。
(Kimahri’s Sphere)
ロンゾは多くを語らない。
しかし、キマリが語らなければ誰が語るのだ?
あの日。
あの男に出会わなければ、キマリはここにいなかった。
あの時。
あの男と約束を交わさなければ、キマリはここにいなかった。
キマリは強い。
それでも、あの時下山した小さいキマリは強さを見失っていた。
瀕死の体でなおも前に進もうとする男の姿に、キマリの胸は奮えた。
ユウナを守る。
男との約束を守る。
キマリはまた強いキマリになった。
ツノがなくとも、形がなくとも。
キマリは本当の強さを知った。
男は何も語らない。
語らずとも、優しい目であの少年を見守っているのをキマリは知っている。
ロンゾは多くを語らない。
男も多くを語らない。
キマリも最後まで黙って見届けよう。
このスフィアに男への感謝と尊敬の念を閉じ込め、いつか語ることが出来る時まで。
【END】