Flower
今日、街でお前を見掛けた。
黄金の髪を揺らして歩くその姿に見惚れ、暫く声を掛けられずにいた。
俺を見つけて驚いた顔をした後、嬉しそうに、そして恥ずかしそうにはにかむ。
その笑顔が眩しくて思わず目を細める。
一日一日成長するお前は、毎日新しい顔を見せてくれる。
出会った頃、膨れ面で毎日泣いていたお前。
初めて俺の名前を呼んだ時のお前。
『好きだ』と言ったお前。
『愛してる』と伝えた時のお前。
初めて俺の腕の中で目覚めたお前。
幸せだと涙ぐむお前。
陽の光を受けて一心に成長する花のように、お前は綺麗に咲き誇る。
綺麗でしょう?と言わんばかりの笑顔を向けて、大きく花開く。
だから俺は大事にその花に水をやる。
風が吹けば盾となって守ってやる。
大切な花びらが散ってしまわないように。
花の命は短い。
美しく大きく花開く時間は限られている。
いつかは散ってしまう運命。
それでもその姿をいつまでも忘れる筈がない。
いつでも俺の心の中にはその花が咲いている筈だ。
今でも目を閉じれば目蓋の裏にすぐお前が映るように。
綺麗な花を咲かせよう。
どんな花よりも大切な、俺だけの花を。
いつまでも俺の中に咲き続ける大輪の花を。
どんな花を見ても間違うことはない。
どんなに多くの花の中でも見付け出すことが出来る。
お前は俺だけの花。
【END】