眠らない街 side A
眠らない街ザナルカンド。
上着をはためかせる風を心地よく感じるのは、泣いてばかりいたあの子の成長を目のあたりにしたからだろうか。
この街は眠らない。
スピラでは昼は昼らしく陽が照り、夜は夜らしく星が輝く。
星の代わりにあの子の勇姿が見られる夜も、またいいものだと思った。
友に託され、あの子の成長を見守ってきた。
自分の役割を思うと優しい言葉などかけてやれなかった。
友との約束が自分の意志に変わってからは尚更だった。
あの子が厳しい現実にも目を反らさずいられるように。
しかし最近思う。
そうしなければ耐えられないのはあの子ではなく自分ではないかと。
眩しい笑顔。
澄んだ瞳。
俺はあの子に魅かれている。
このままあの子を見ていたい。
今も瞳の奥に隠れている涙ごと抱き締めてやりたい。
たとえ叶わなくても、
眠らないこの夢の街で
あの子の傍で夢をみよう
目覚めのその時まで。
【END】