眠らない街 side T






眠らない街ザナルカンド。
残り香のようにまとわりつく熱気を夜風が拭い去ってくれる。
耳の奥にはまだ歓声が残っている。
最後に決めたゴール。
あの人は見ていてくれただろうか。



この街は眠らない。
夜になっても街の明かりが邪魔をして星は見えない。
あの人はどこから来たんだろう。
この街の人間とは違う空気を持っている。
きっと、星の見える所から来たんだと、そう思った。

親父の知り合いだという以外、何も知らない。
保護者代わりのその男は、無口で必要なこと以外喋らない。
口を開いたかと思うと人の神経を逆撫でするようなことを平気で言う。

だけど最近思う。
あの人は、甘やかすだけが優しさではないと知っている人なんじゃないかと。



頑強な身体。
右目の傷。

俺はあの人に魅かれはじめている。



あの人と一緒に星を見たい。


真実しか捉えないようなその目に映る物を知りたい。


たとえ叶わなくても、


眠らないこの街で眠りについて


あの人の夢をみよう。














【END】