二人の時間
「絶対ダメだ」
「何でダメなんだよっ!分からず屋っ!!」
事の発端はティーダがバイトをしたいと言い出したことにあった。
学校の友達は殆どがバイトをしている。
バイトをすれば友達も増えるし、遊ぶお金だって手に入る。
友達の話を聞いているといいことづくめなのだ。
それに今はアーロンからお小遣いを貰っているが、その負担だって軽く出来る。
ティーダはティーダなりにアーロンに対しても気を使っているつもりなのだが…。
「ダメだと言ったらダメだ」
突然何を言い出すかと思えば…バイトだと!?
学校行ってブリッツの練習に通って、ただでさえ時間が合わないというのに、これでバイトなんてされたらたまらない。
一緒にいられる時間が少なくなるのも勿論嫌なのだが、可愛いティーダがバイト先で狙われるんじゃないかと思うと絶対に許せない。
「…何でバイトしたいのか言ってみろ」
頭ごなしに反対しても反発されるだけでらちがあかないので、とりあえず理由を聞いてみることにした。
「まず…友達が増える!!」
俺がいれば友達などいらんだろっ!!と叫びたい気持ちをぐっと堪える。
「ティーダ、バイトというのはな、金を貰って働くってことだ。友達作りに行くところではない。却下」
もっともなことを言われて一瞬ひるんだティーダであったが、負けじと続ける。
「遊ぶお金を自分で稼げるじゃん!!」
「小遣いならやってるだろうが…」
「俺だってもう自分で稼げる年っスよ!少しでもアーロン助けたいと思うんだってば!!」
アーロンを助けたい、という言葉に内心喜んだアーロンだったが、それでも許す訳にはいかない。
「負担になどならん。俺がいくら稼いでると思ってるんだ?却下」
確かにアーロンはかなりの高給取りである。ティーダもかなり贅沢をさせてもらっていると思う。
それでも納得がいかないティーダは、逆にアーロンに聞き返す。
「じゃあ、何でアーロンは俺がバイトするのに反対なんスか?」
蒼い瞳で睨んでくるティーダに『一緒にいたいから』等と言える訳もなく、アーロンは暫く考えてから言った。
「お前は学校とブリッツでただでさえ忙しい。その上バイトなんてしてみろ。疲れ切って体を壊すのが目に見えている」
「俺、そんなヤワじゃないっスよ」
尚も睨みながら反論するティーダに優しい顔で微笑んで見せる。
「俺はお前の体が心配なんだ…。それに、お前にはブリッツに好きなだけ打ち込ませてやりたいしな…」
「アーロン…」
優しい言葉に感動したティーダはアーロンに抱きついてきた。
「ありがと…俺、アーロンの気も知らずに…」
「わかってくれればいい」
「アーロン、大好き」
うっとりした顔のティーダ。
アーロンは心の中でガッツポーズをしていた。
が、しかし。
「遅いぞ!何時だと思ってるんだっ!?」
「好きなだけブリッツに打ち込んでいいって言ったのアーロンじゃん」
「……」
結局ティーダはアーロンの言葉通りブリッツに打ち込むようになって遅くまで帰ってこないようになり、自分で墓穴を掘ってしまったアーロンであった…。
哀れアーロン。
【END】