Don’t forget
最近、親バカの気持ちがわかったような気がする。
大勢の子供が遊んでいても、ティーダをすぐに見つけられる。
群を抜いて一番可愛いと思う。
無邪気に笑うティーダを見ていると、自然と顔が弛んでしまう。
「アーロン!」
俺を見つけてパッと顔を輝かせるティーダを見るのが好きだ。
俺の腕に勢いよく飛び込んでくるティーダが可愛くてたまらない。
「ねぇアーロン、一緒にお風呂入ろ?」
食器を洗うアーロンのシャツをティーダが後ろから引っ張って甘える。
「もう一人で入れるだろうが」
「え〜っ!いいじゃん、ね?ねぇったらぁ!ダメ〜?」
まとわりついて離れないその姿が愛らしくて、ついつい甘やかしてしまう。
「しょうがないな…じゃあ一緒に入るか」
「やったぁ〜!!」
ティーダは洗い物が終わるまで待つと、早く早くとアーロンの手を引いて風呂場まで急かす。
勢いよく服を脱ぎ始めるティーダ。そのきれいな肌に思わず見入ってしまい、アーロンの服を脱ぐ手が止まる。
俺は正気か?
相手は子供だぞ!?
アーロンの思考とは関係なく、下半身が反応を示す。
「アーロンも早く脱いでよぅ!」
上半身裸のティーダが嬉しそうにアーロンのズボンに手を掛ける。
「ちょっ…ちよっと待てっ!!」
「どうしたの?」
キョトンとするティーダ。どうしたのと言われても…言葉に詰まる。
「やっぱり一人で入れっ」
不満顔のティーダを残してドアを閉める。
子供相手に欲情してどうする…。
アーロンは自分自身に困惑し、ひどく落ち込んだ。
そりゃあ確かにティーダは可愛いが、まだ子供だ。こんな自分を見せる訳にはいかないだろう。
せめてもう少し大きくなってから…。
そう思ってはっとした。
大きくなってから?
親バカだと思っていた気持ちがどういうものなのか、気付いてしまった。
「もう、一緒に風呂は無理だな…」
アーロンはドアの前でうなだれた。
ある日、ティーダが学校から泣きながら帰ってきた。
「どうした?ケンカでもしたか?」
ティーダはアーロンの顔を見ると、わあっと泣きながら抱きついてきた。
何を聞いても興奮していて言葉にならない。しばらく背中を擦ってやり、まだ涙の止まらないティーダに水を飲ませて落ち着かせた。
「で、何があったんだ?」
「…みんなで大きくなったら何になりたいか話してたんだ…」
ティーダは口を尖らせて話しだす。
「お前はブリッツの選手だろう?」
いつもティーダ自身が言っていることだ。エースになるんだって。
しかし、ティーダは首を振った。
「何だ、違うのか?」
「…始めはそう言ったんだけど、女の子たちが『パパのお嫁さんになる』て言うから」
そこまで言うと、ティーダは一呼吸置いてアーロンの顔を見つめて続けた。
「俺も『アーロンのお嫁さんになる』て言ったんだ」
アーロンは驚いてティーダの顔を見つめ返した。
「そうしたらみんながお前は男だから無理だって笑うんだもん」
そりゃそうだろう…。
アーロンは驚きの余り言葉が出なかった。
そんなアーロンを見て、膨れっ面のティーダはまた涙を溜めて言った。
「『パパのお嫁さん』は良くて、何で『アーロンのお嫁さん』はダメなの?俺だってアーロンのお嫁さんになりたいもん」
言い終わると同時にまたワァワァと泣きだしたティーダを、アーロンは堪らなく愛しいと思った。
子供の戯言、そんなことは分かっていても、嬉しかった。
再びティーダを胸に抱き締め、頭を撫でてやる。
「そんなに俺の嫁さんになりたいか…?」
「…ひっく…なりたいよっ…」
「そうか…じやあ、早く大きくなれ」
大きくなったら、お前はもうこんなこと忘れているだろうけど。
忘れたら、また思い出させてやる。
「忘れるなよ…ちゃんと嫁さんになれよ」
「うんっ!」
泣きながら笑うティーダの額に軽くキスをする。
今はこれで我慢してやるから…
早く大きくなれよ。
【END】