I’m a Liar






アーロンを好きだと気付いてから、初めて迎えるアーロンの誕生日。
「誕生日プレゼント何が欲しい?」

今までは『おめでとう』と言ってケーキを食べる位だったけど、何かしてあげたくて聞いたのに。

「…何も欲しくない」
「はぁ?そんなこと言ってると何もあげないっスよ!?」
「ああ、いらん」

何か残る物をあげたかった。
アーロンの周りに俺の想いを置いておきたくて。
それを見て、少しでも俺を思ってくれるように。
それなのに、アーロンは俺の想いを否定するかのように言い放つ。

「形に残る物は持たない主義でな」


俺の勝手な片想い。

わかってる。
叶うはずないって。
一緒にいられるだけでも幸せなことなんだって。


だけどやっぱり辛いんだ。
一緒にいられても、想いがどんどん膨れ上がって、辛いんだ。


ティーダに、誕生日に何が欲しいか聞かれた。
「…何も欲しくない」

いつかは手放さなければならない物になど、何の意味があるだろう?
お前から貰った物なら尚更、残していくのは嫌だから。


何もあげないよと膨れるティーダに心の中で苦笑する。
ティーダの気持ちに気付かないわけじゃない。
俺も好きだと抱き締められたら、どんなにいいだろう。

だが、お前は知らない。俺達の未来を。
必ず別れがくる、その運命を。


お前と抱き合えば、その分別れは辛くなる。

離れたくないと思えば、覚悟は鈍る。


だから俺は気付かないふりを続ける。

お前の痛みにも、

お前の涙にも、

自分自身の想いにも。

「本当に欲しい物ないんスか?」
「ないな」
しつこく念を押す俺にアーロンは即答する。

そんな言い方しなくてもいいのに…。

アーロンのちょっとした言葉にも、俺の心は傷ついてしまう。
傷ついた心を隠すように、イーッと歯を向けてみせる。


何も考えずにアーロンが好きだと言えたら、どんなにいいだろう。

泣いて喚いて抱きつけたら、どんなに楽になるだろう。

でも、できない。


そんなことをしたら、一緒にいられなくなるから。

どんなに辛くとも、アーロンがいなくなるよりはいいから。


「もーっ、アーロンなんか知らない!後でやっぱり、なんて言ってもダメっスよ!」

だから俺は嘘をつく。


アーロンの重荷にならないように。

アーロンがどこへも行かないように。

欲しい物はない。
ティーダにはそう言った。


本当はお前が欲しい。

いつまでもお前と一緒にいられる時間が欲しい。


そう口に出せたら、どんなにいいだろう。

痛みも、苦しみも、喜びも、お前と分かち合えたらどんなに楽になるだろう。


でもそれは、望んではいけないもの。

どんなに望んでも手に入らないもの。
お前が悲しむ姿を見たくないと思う。


でも本当は、俺が怯えているだけなのかもしれない。


別れを恐れない勇気。

目を逸らさない勇気。


それが今一番俺に必要なものなのかもしれない。
だけどそれさえ手に入れられず、今日も俺は嘘をつく。


ただ迫りくる別れの為に、

お前にも、

俺自身にさえも。
【END】