独白(Wakka’s Sphere)
王様の耳は…何の耳だって言ったっけ?
…まぁいーや。
アイツが教えてくれたんだけど忘れちまった。
言いたくてたまらないけど誰にも言えないことを壺にぶちまけて埋めたとかなんとか。
そんなんでホントにスッキリすんのかよ…と思ったけど、まぁ、な…。
……んー、
なんか独り言ってのも照れちまうな……
初めてアイツに会った時、俺は相当びっくりした。
すげーワザを見せられたこと。
それから、弟に──
チャップに、似ていたこと。
アイツはシンの毒気にやられたって言ってた。
なんだか様子がおかしかった。
でもほんとのところ、そんなことどうでも良かった。
むしろ都合が良かったっつーか…。
俺はアイツをうちのチームに入るよう誘った。
面倒を見てやるとも言った。
お前がチャップに似ていたから。
チャップの代わりっちゃなんだけど、
アイツを側に置いておきたかったんだ。
──でもな…やっぱりチャップはチャップなんだよな。
アイツはアイツなんだよ。
一緒にいればいる程、
目についてしょうがないんだわ。
アイツとチャップの違うとこばっか。
ルー、お前はよく言ったよな。
アイツとチャップは違うんだって。
何度も何度も言ったよな。
そんなこたぁ俺が一番わかってるっつーの。
何年チャップの兄貴やってたと思ってんだ?
そんなことわかってるからよう……
アイツとチャップが違うって認めてからも
アイツを側においておきたいと思ってる自分に気が付いた時は…
正直まいった。
だってそうだろ、
チャップに似てるからってんじゃなけりゃなんだってんだ、
てな。
だから俺は、アイツをチャップに重ねようとしてたんだ。
もう、チャップじゃなく、
アイツにしか見えないアイツに、
必死になってチャップの姿を探してた。
おかしいよな…。
笑っちまうよ。
それでももう、
自分の気持ちを認めざるを得なくなった時、
俺はチャップの死を受け入れることが出来たんだ。
俺はアイツが好きみてぇだ。
気付けば目でアイツを追ってる。
ふざけてじゃれあってる時だって、
本当は心臓バクバクいってんだぜ?
このワッカ様がよぅ。
でもアイツは全く気付かねえ。
そりゃそうだろうな、
アイツの目はいつも違うとこ見てるもんな。
まぁ、少なくともブリッツやってる時は俺を見てくれてる。
……と、思う。
だから今んとこ俺はブリッツやってる時が一番幸せだ。
なーんも考えないでよー、アイツとボール追ってよ。
悪ィけどそんときゃシンのことも頭にねえ。
俺とアイツがいる。
ただそんだけだ。
…けっ。
んなこと言ってたら無性にブリッツやりたくなってきちまったじゃねーか。
善は急げだな。
て、ちと違うか…。
──しかし、このスフィア、どーすりゃいいんだぁ?
埋めるのか…?
いや、アイツの話じゃ、確か壺が掘り返されて大変なことになんだよな…。
…やっぱ持ってくか。
ゴソゴソッ。
おいっ!ティーダっ!
スタジアム行くぞ〜っ!!
【END】