あたたかい場所


「ん〜、いい天気っス!!」
洗濯物を干し終え、伸びをする。暖かい日差し、青い空。シャツをはためかせる風も心地よい。こんなにいい天気なのにアーロンはまだ寝てるのかな?

寝室に入るとアーロンはやっぱりまだ寝ていた。無防備な寝顔。指でツンツンしてみると、眉がピクンと動く。
かわい〜っ!

「アーロン、もうすぐお昼っスよ?起きないの?」
優しく肩をポンポンと叩くと、うるさいと言わんばかりに手を払い除けられた。

「アーロン!起きてよ!」
耳元ででかい声を出したら、目を開けてこっちを見たくせに頭まで布団を被ってしまう。
かわいくね〜…。

「もーっアーロン!!いい加減起き…うわっ!?」
布団を剥いで起こそうとしたら、逆に腕を取られて布団の中に引っ張り込まれた。
「お前ももう少し寝ろ…」
「ちょっと、アーロンっ…離せよーっ!」

アーロンの腕は俺をしっかり捉まえて離さない。じたばたしても力で適うはずもなく、余裕のアーロンは俺の顔にキスを散らしてくる。

しばらくもがいてみたけど無駄な抵抗で、俺もすっかり諦めて脱力するとアーロンがニヤリと笑う。
「まいったか?」
「まいったっス…」

くすくすと笑う振動がアーロンの体から俺の体へと伝わってくる。何も羽織っていないアーロンの胸に耳を当てると、穏やかな心音が聞こえてくる。

「こんなに天気いいのにゴロゴロしてたら勿体ないっスよ〜?」
「たまには時間の無駄使いもいいもんだぞ」
その低い声もまたアーロンの体に響いて耳に伝わる。

アーロンの声にまで包まれている気分。暖かい日差しに負けない位、温かいアーロンの胸。のんびりするのもまあいいかな、なんて思えてきて、気付かぬうちにアーロンのゆるやかなペースに巻き込まれている俺。

アーロンの腕は逞しい。厚い胸板に広い背中。俺の体はアーロンの体にすっぽり納まってしまう。
「俺、年くったらアーロンみたいになりたいなぁ〜」
そう言うと頭を軽くこづかれた。
「…年くったらは余計だ」
「あはは、ゴメ〜ン」
「しかし、お前が俺のようになったら俺が困る」

「何で?」
不思議に思って顔を上げると、アーロンのまっすぐな眼差しにぶつかった。

「お前を守ってやる必要がなくなってしまうからな…」

アーロンの言葉に喜びつつもなんだか照れくさくって、またアーロンの胸に顔を埋める。
「…じゃあ俺、ずっとこのままでいよーっと」

アーロンの腕の中は俺の一番好きな場所。照れ隠しでギュッと抱きついて、ずっと側で守っていてねって意味を込めて呟いたのに、アーロンは肩を震わせて笑っている。

「少しは成長しろよ…ククッ…」
「なっ…人がせっかく可愛いこと言ってるのに…笑うなんてひどいっス!!」
もう知らない!と思ってベッドから出ようとしたら、またアーロンに引っ張られてその胸に転がり込む。

「もう少し抱かせてろ…」
そんな風に耳元で言われたら断れるわけがなくて。
「…しょうがないっスね…じゃあ、12時になったら絶対起きるんスよ!?」
「クククッ…了解」
そう言いつつも12時になっても起きてくれないことは分かってる。

全く俺はアーロンに甘いなぁ…。なんて、結局俺も甘やかされてるんだけど。
今日は一日潰れたな、と思いながらアーロンの温かい胸の中にいる俺は、贅沢な時間の無駄使いを楽しみ始めている。












【END】