幼い頃、怖い夢を見て泣きながらアーロンのベッドにもぐりこんだ。
腕の中で怖がる俺の頭を優しく撫でて安心をくれた。
時が経った今も、俺はこうしてアーロンの腕の中にいる。
安心できる温かい胸も、優しい腕も、昔と何も変わらない。
ただ、あの頃は怖くてしがみついていただけだけれど、今は違う。
好きで好きで、どうしようもなく好きで、ずっとくっついていたくて。
いつからだろう?
アーロンの胸の中にいることを幸せだと思ったのは。
いつからだろう?
幸せの意味を知ったのは。
「ねえアーロン…こんなに幸せでいいのかな?」
「いいに決まっているだろう…。お前を幸せにする為に俺はいるのだから」
「アーロンの幸せは?」
「お前が幸せなら俺も幸せだ…。だから、もっと幸せになってもらわんとな」
目を細めて笑うアーロンを見て、胸の奥が捕まれたように苦しくなる。
苦しくて、涙が出そうで、ぎゅっと目をつぶる。
「どうした…?」
心配そうなアーロンの声。
「知ってた?…幸せって時々苦しいんだよ…」
目をつぶったままでも涙が溢れる。
頬を伝う滴をアーロンの唇が拭い去る柔らかな感触。
「じゃあ、薬をやろう…甘い薬を」
薬?と聞き返す前に、俺の口はアーロンの唇に塞がれた。
「どうだ?」
あんまりアーロンが可愛いことをするから、思わず笑う。
それを見てアーロンも笑う。
アーロンのくれるキスはとても甘い。
甘い甘いとろけるようなキス。
胸の痛みも少しは和らいで。
でも。
もっともっとキスをちょうだい。
その甘さに、痛みを全て忘れる位溺れさせて…。