闇の雨



雨は振り続いている。
ベッドの中にはすやすやと眠る愛しい人。
ベッドの淵に腰掛け、そのきれいな金色の髪に触れる。

あんなに愛し合った後なのに。
こうして手を触れることもできるのに。

二人でいるのにどうして淋しいんだろう。
どうしてこんなにも心細い気持ちになるんだろう。
こんなにも孤独を感じるのはなぜだろう。

なぜ?

窓際に立ち、窓の外に視線を移す。
ガラスを伝う雨の滴。
屋根を叩く雨音。

「あいしてる」
耳に残るお前の言葉さえもかき消されていく。
苦しげに絡み付いてきたお前。
体に残るそのぬくもりさえも奪われていく。

呑み込まれそうな暗闇。
雨音が響き渡るこの静かな世界で、自分がただひとつの存在のような錯覚。

愛しすぎて辛い。
一人よがりじゃないかという不安にかられる。
満たされてもすぐに渇く心。
愛した分愛されたいと願う。
眠りに落ちたお前にさえも愛を渇望する。

寝返りをうつお前。
向けられたきれいな背中。

雨が止み朝がくればまた陽は照るけれど。
目を覚ましたらお前はまた笑顔をくれるけれど。

雨はまだ止まない。

夜もまだ明けない。

お前は眠りの中。


眠っているお前は俺を必要としていないような気がして。
目を閉じたお前の世界には、俺が存在していないような気がして。
その背中がそう主張しているように見えて。

愛してると何回聞けばこの心は落ち着くのだろう。
何度お前を抱けば安心できるのだろう。

眠ることもできずに。

不安を拭い去ることもできずに。

お前が目を覚まして俺の名を呼ぶまで、

お前の背中を見つめ続ける。

ただ、雨音を聞きながら−−。


【END】