Oneday side T



独り言のように発して玄関のドアを開けた時には日付がとっくに変わっていた。
アーロンを起こさないように、そうっと家の中に入る。
ブリッツの練習を終え、チームメイトと話し込んでいたらこんな時間になってしまった。

アーロン怒ってたろうな…
連絡しなかったからなぁ〜

そんなことを考えながらリビングの電気を付けた時、心臓が停まりそうになった。

「アーロンっ…」
もうとっくに寝室で寝ていると思っていたアーロンがソファにもたれかかってうたた寝していた。
テーブルには飲みかけのブランデーのグラスが置いてある。

待っててくれたのかな…?

穏やかな寝顔。
普段のアーロンからは伺い知れない、俺だけが知っているアーロンの顔。

今まで怒られるかもしれないってヒヤヒヤしていたくせに、口角が上がってしまう。

アーロンの隣に腰掛け、軽く肩を揺さぶりながら声をかける。
「こんなところで寝てたら風邪ひくよ?」
「ん…」
聞こえているのかいないのか。
「ね、アーロン?」
何度か名前を呼ぶと、眠そうに目をこすりながらも目を覚ました。
「ティーダ…」
やっと俺の姿を認めると、そのままふわりと俺を抱き寄せた。

「ティーダ…会いたかった…」

今朝も顔を合わせているのにそんなことを言うから、思わずクスリと笑ってしまう。

でも、そんなアーロンがとても愛しくて。
俺も会いたかった、と言いながら背中に腕を回した。

アーロンの温もり。
アーロンの息遣い。
アーロンの声。

アーロンの何もかもが俺を癒してくれる。

「会いたかった」
甘い声で、耳元で繰り返し囁かれる。
それに比例するかのように、段々と俺を抱くアーロンの腕にも力が籠もる。

心配させちゃったかな…
肩に預けていた顔をあげ、いつもアーロンが俺にしてくれるように、アーロンの頭を撫でる。

「俺はいつでもアーロンの側にいるよ?」
顔を覗き込むように笑って言うと、優しいキスの雨が降ってきた。

切ない目で俺を見るアーロンがたまらなく愛しくて、自分から唇を重ねた。
深く深く口付けた後、名残惜しそうなアーロンの唇から離れる。

「愛してる」
アーロンの言葉に今度は笑うことなく答える。
「俺も…」

ソファから腰を上げ、アーロンの手を引く。
「一緒に寝よ?」
愛しい人が微笑みながら立ち上がる。

いつも力強いアーロンが子供のように見えて、それもまた嬉しく思える。

アーロンは俺の支え。
俺はアーロンの支えになれてる?

「今日は俺が腕枕してあげるよ」
「クスッ…頼むとするか…」

どうってことない一日。
何ら変わりのない日常。
だけど、アーロンがいるだけでこんなにも幸せな一日になる。

幸せな一日をありがとう。
明日もまたよろしくね。
おやすみ、アーロン…。


【END】